まさか自分の家が、と多くの人が思うでしょう。私もその一人でした。築15年になる我が家は、私にとって自慢の城であり、家族との笑顔が溢れる場所でした。その平穏が、ある日突然、静かに崩れ始めたのです。最初の異変は、玄関の上がり框でした。掃除機をかけていた妻が「なんだかこの辺りの床がフワフワする」と言い出したのです。最初は気のせいか、木材が少し劣化したのだろうと軽く考えていました。しかし数週間後、框の隅に、まるで針で刺したような小さな穴がいくつか開いているのを見つけました。不審に思い、その穴を爪楊枝でつつくと、いとも簡単に崩れ、中から粉のような木くずが出てきました。その瞬間、私の背筋を冷たい汗が流れました。インターネットで「床がフワフワ、木くず」と検索すると、画面には「白蟻被害の初期症状」という恐ろしい文字が並んでいました。いてもたってもいられなくなり、私はすぐにインターネットで評判の良さそうな白蟻駆除業者を3社探し、無料の床下点検を依頼しました。翌日、最初にやってきた業者の担当者が、防護服に身を包み、床下収納から暗い闇の中へと消えていきました。しばらくして戻ってきた彼の顔は、曇っていました。「残念ながら、かなり広範囲にやられています」。彼は、床下で撮影したという映像をタブレットで見せてくれました。そこに映っていたのは、土台の木材にびっしりと張り付く無数の白蟻と、彼らが作り上げた不気味な蟻道でした。我が家の土台が、静かに食べ進められていたのです。その光景は、ホラー映画よりも恐ろしいものでした。他の2社の調査でも結果は同じでした。3社の見積もりと説明を比較検討し、私たちは最も説明が丁寧で、私たちの不安に親身に寄り添ってくれた一社に駆除をお願いすることにしました。駆除当日、作業員の方々が専用の機材で床下に薬剤を散布していく様子を、私たちは固唾を飲んで見守りました。数時間に及ぶ作業が終わり、「これで5年間は安心です」と保証書を手渡されたとき、ようやく家族に安堵の表情が戻りました。今回の経験で私が学んだのは、白蟻被害は決して他人事ではないということ、そして少しでも異変を感じたら、迷わず専門家に相談する勇気が何よりも重要だということです。あの日、妻の小さな気づきを放置していたらと思うと、今でもゾッとします。