高齢化社会が急速に進む日本において、認知症を患う高齢者が家族の目を盗んで一人で外出してしまい、行方が分からなくなったり事故に遭ったりする徘徊問題は多くの介護家族にとって深刻な悩みですが、その対策の一つとして玄関のドアチェーンが意外な形で活用されていることをご存知でしょうか。通常のドアチェーンは外からの侵入を防ぐために設置されるものですが、徘徊防止を目的とする場合は、内側から簡単に開けられないようにするという逆転の発想での運用が求められ、実際に介護用品として販売されている特殊なドアチェーンや補助錠には、内側から解錠するためにも鍵が必要なタイプや、高齢者の手が届きにくいドアの最上部に取り付けるタイプなどが存在します。認知症の方の中には、昔からの習慣で鍵やチェーンの開け方は体が覚えていてスムーズに解錠できてしまうケースも多いため、単純なチェーンでは防止効果が薄いこともありますが、操作手順が複雑なものや物理的に手が届かない位置にあるものは、認知機能が低下した方にとっては大きなハードルとなり、無断外出を未然に防ぐ効果が期待できます。しかし、ここで注意しなければならないのは、火災や地震などの緊急時に避難が遅れてしまうリスクとのバランスであり、あまりにも厳重にロックしすぎてしまうと、いざという時に家族も含めて誰も脱出できなくなるという最悪の事態を招きかねません。そのため、内側から鍵をかけるタイプのチェーンを導入する場合は、その鍵の保管場所を家族全員で共有し、緊急時にはすぐに持ち出せるようにしておくことや、近隣住民との連携を図っておくことなど、安全管理の徹底が不可欠となります。また、ドアチェーンによる対策はあくまで物理的な抑制手段の一つに過ぎず、ご本人の「外に出たい」という気持ちや不安感に寄り添うケアと並行して行うことが大切であり、GPS機器の携帯やセンサーマットの活用など、他の見守りツールと組み合わせることで、介護する側の精神的・肉体的負担を減らしつつ、高齢者の安全と尊厳を守る環境を作ることが理想的です。ドアチェーンは小さな部品ですが、その使い方や選び方を工夫することで、防犯だけでなく介護の現場における安全確保という重要な役割をも担うことができるツールであり、高齢者とその家族が安心して暮らせる住まい作りの一助となる可能性を秘めているのです。
認知症対策としてのドアチェーン活用法