春から初夏にかけての特定の時期、家の中や庭で羽のついたアリを大量に見かけたら、それはあなたの家に迫る危機を知らせる危険なサインかもしれません。多くの人はそれを単なる黒アリの羽アリだと思い、殺虫剤を撒いて終わりにしてしまいがちですが、もしそれが白蟻の羽アリだった場合、問題は遥かに深刻です。白蟻は普段、光や乾燥を嫌い、地中や木材の内部で人知れず活動していますが、新たな巣を作るために一部が羽アリとなって一斉に飛び立ちます。つまり、羽アリの発生は、すでにお住まいの家、あるいはそのすぐ近くに成熟した白蟻の巣が存在する強力な証拠なのです。まず、見つけた羽アリが白蟻かどうかを見分けることが重要です。一般的な黒アリの羽アリは、腰の部分がハチのようにくびれていますが、白蟻の羽アリは胴体がずんどうでくびれがありません。また、黒アリの羽は前羽が後羽より大きいですが、白蟻は4枚の羽がほぼ同じ大きさで、簡単に取れやすいという特徴があります。もし自宅で白蟻の羽アリを見つけたり、大量の羽だけが落ちていたりした場合は、すぐに専門家へ相談すべきです。羽アリ以外にも、自分でできる白蟻被害のチェックポイントはいくつかあります。まず、家の基礎や束石の周り、玄関のタイルなどに、土でできた細いトンネルのような「蟻道(ぎどう)」がないか確認しましょう。これは白蟻が地中から建物へ侵入するための通り道です。次に、柱や壁を軽く叩いてみてください。もし「コンコン」という詰まった音ではなく、「ポコポコ」という空洞音がしたら、内部が食害に遭っている可能性があります。また、床を歩いたときに特定の場所がフカフカと沈むように感じたり、ドアや窓の建付けが悪くなったりするのも、柱や土台が被害を受けているサインかもしれません。浴室やキッチン、洗面所といった水回りは特に湿気が多く、白蟻が発生しやすい要注意エリアです。定期的なセルフチェックでこれらの兆候を早期に発見し、手遅れになる前に対策を講じることが、大切な住まいを守る鍵となります。